「いたします」と「します」の違い|迷わない使い分けのコツ
「いたします」と「します」。どちらもよく使う言葉なのに、いざメールや連絡帳を書く場面になると、「どっちが正しいのかな」と手が止まることはありませんか。特に、先生や上司など目上の人に向けた文章では、なんとなく「いたします」のほうが丁寧そうに感じて迷いやすいものです。
でも実は、この2つは“正しい・間違い”で分けるものではありません。大切なのは、相手との距離感や場面に合っているかどうか。この記事では、難しい敬語の説明を使わずに、日常感覚で分かる使い分けの目安を整理します。
「します」はいちばん基本の言い方
「します」は、動作や予定をそのまま伝える、いちばん基本の表現です。特別にへりくだった気持ちは含まれていませんが、だからといって失礼な言い方でもありません。まずはこの感覚を押さえておくと、安心して使えるようになります。
「します」は、いわば“標準の温度”の言葉。強くも弱くもなく、日常に自然になじむ言い方です。
具体例
・明日、提出します。
・あとで電話します。
・私が準備しますね。
・確認してから返信します。
どれも、事実や予定をそのまま伝えています。余計な飾りがなく、分かりやすいのが特徴です。
使われる場面
・家族との会話
・同僚とのやり取り
・社内チャット
・園や学校へのややカジュアルな連絡
たとえば、子どもの担任の先生に
「書類は本日提出します。」
と書いても、それだけで失礼になるわけではありません。十分に通じますし、ぶしつけという印象もありません。
間違いやすいポイント
「します」はフラットな表現なので、あらたまった場面では少し軽く感じられることがあります。とくに、初めてやり取りをする相手や、目上の人に対しては、もう一段やわらかい言い方を選ぶほうが安心なこともあります。
ただし、「します=失礼」と思い込む必要はありません。まずは基本形として使える言葉だと理解しておくことが大切です。
「いたします」は一歩ひかえた言い方
「いたします」は、「します」をよりていねいにした表現です。自分の行動を少し控えめに、相手を立てる気持ちで伝えるニュアンスがあります。
言い換えるなら、“自分が前に出すぎない言い方”です。
具体例
・明日、改めてご連絡いたします。
・こちらで手配いたします。
・確認のうえ、返信いたします。
・後ほどご説明いたします。
同じ内容でも、「いたします」にすると、落ち着いた印象になります。文章全体がやわらかく整う感覚があるはずです。
使われる場面
・仕事のメール
・取引先とのやり取り
・保護者として学校に連絡するとき
・お客様対応
たとえば、園に欠席連絡をする際に
「後ほど改めてご連絡いたします。」
と書くと、ていねいで配慮のある印象になります。
間違いやすいポイント
どんな場面でも「いたします」を使えばよい、というわけではありません。
家族との会話で
「あとで買い物いたします。」
と言うと、少しかしこまりすぎた印象になります。
ていねいさは大切ですが、相手との関係に合っていないと、距離ができてしまうこともあります。
迷いやすいのは“相手との距離感”
この2つで迷う一番の理由は、「どれくらいていねいにすればいいのか」がはっきりしないからです。
実は、言葉そのものよりも大事なのは“相手との距離”です。
同じ内容でも、相手が変わるだけで自然な言い方は変わります。
・夫に対して →「あとでやります」「します」
・ママ友に対して →「あとで返信するね」
・先生に対して →「対応いたします」
・取引先に対して →「早急に確認いたします」
迷ったときは、「自分が一歩ひいたほうがよい相手かどうか」を目安にすると分かりやすくなります。
対等、もしくは身近な相手なら「します」。
少しあらたまった関係なら「いたします」。
正解を探すよりも、距離感を考える。それだけで、言葉選びはぐっと楽になります。
「いたします」は多用しすぎなくて大丈夫
ていねいに書こうとすると、文章のほとんどを「いたします」にしてしまうことがあります。
たとえば、
「ご確認いたしましたら、ご連絡いたします。」
丁寧ではありますが、少しかたく、重たい印象もあります。
使い分けのコツ
・大事な動作だけを「いたします」にする
・他は「します」や別の言い方にする
例
「資料を確認し、明日ご連絡いたします。」
このようにバランスをとると、自然で読みやすい文章になります。
間違いやすいポイント
ていねいにしようとして言葉が重くなると、かえって距離が出てしまうことがあります。相手との関係に対して“少し丁寧”くらいが、実はちょうどよいことも多いのです。
すべてを「いたします」にする必要はありません。強弱をつけることで、文章は読みやすくなります。
子育て世代が迷いやすい場面
子育て中は、園・学校・習い事など、ほどよく丁寧な文章を書く機会が増えます。
たとえば、
・「本日お休みします」
・「本日お休みいたします」
どちらも間違いではありません。ただ、連絡帳や公式なメールでは「いたします」のほうが無難に感じる場面が多いでしょう。
一方で、ママ友へのLINEで
「後で返信いたします。」
と書くと、少しよそよそしく感じるかもしれません。
仕事でも同じです。社内チャットなら「します」で十分なこともありますし、外部へのメールなら「いたします」のほうが安心なこともあります。
場面によって言葉の温度を変える。これがいちばん実用的な考え方です。
言葉はルールだけで決めるものではありません。相手との関係、場面の空気、自分の立場。そのバランスを見ながら選ぶものです。
「どちらが正しいか」ではなく、
「この場面に合っているのはどちらか」。
そう考えるようになると、きっと次からは迷いにくくなります。
まとめ|「いたします」と「します」の使い分けはこう考える
「します」は、いちばん基本で自然な言い方。
「いたします」は、自分の行動を一歩ひかえて伝える言い方。
どちらが正しい、というよりも、
・相手との距離
・場面のかしこまり具合
・文章全体のバランス
を見ながら選ぶのがコツです。
迷ったときは、「この相手に、少し丁寧に伝えたほうが安心かな」と自分に問いかけてみてください。その感覚に沿って選べば、大きく外れることはありません。
次にメールを書くときは、
「今日は“します”でいいかな、それとも“いたします”かな」
と一瞬立ち止まるだけで、きっと迷わず書けるようになります。